あやしうこそものぐるほしけれ。

心に浮かびゆくよしなしごと

【妄想読書】もしも一人ぼっちのクリスマスを過ごすなら

クリスマスってそんな都合良く一緒に過ごしてくれる人がいるわけじゃないですよね。全く予定入ってないけど、でもわざわざ適当な人と過ごして虚しい気持ちになるくらいなら一人でずっと家から出ないという選択をしたい。そんな気分のあなたに。

本はいつも優しく寄り添ってくれるのです。

 

妄想シチュエーション

○クリスマスイブの休日、1日家で過ごすことに。

○クリスマス前後も仕事に追われていて慌ただしい毎日。

○恋愛もしてないし、別に今は必要ないけどなんか淋しい気持ちも。

 

そんな時はこんな本

○クリスマスシーズンが描かれた本

○ほっこりするラブストーリーはNG。共感度高い癖のある作品。

○対象年齢は社会人以上。

 

オススメしたいこの3冊

①森見登美彦/太陽の塔(新潮文庫)

太陽の塔 (新潮文庫)

太陽の塔 (新潮文庫)

帯で声高に訴えられているすべての失恋男だけでなく、大学生ってこんなはずじゃなかった、と感じたことのある全ての人に読んで欲しいです。

クリスマスに彼女のいない淋しさをこんなにコメディにファンタジックに描いた作品が他にあるでしょうか。

何かしらの点で、彼らは根本的に間違っている。 なぜなら、私が間違っているはずがないからだ。 

 書き出しからしてこれですから。何故こんなに上から目線なのか、阿呆じゃないかと思いつつ、くすりとしてしまった人は、きっとこの作品を楽しめるはずです。

ストーリーとしては袖にされた水尾さんの研究(ただのストーキング)に勤しむモテない京大生(5回生で休学中、学業もぐだぐだ)の日常を切り取り、謎のファンタジックな展開に昇華されていくくだらない作品なのですが、ただの「阿呆」で切り捨てるにはもったいないくらい文体が独特(それをかつて「森見節」と呼びました)で、とにかく面白い。

特に面白いのが途中であらわれたストーカーのライバル、遠藤とのくだらない嫌がらせの応酬。誰もがきっとトラウマになる伝説の嫌がらせ、「ゴキブリキューブ」プレゼント作戦というのがあって、これがもうひどい。

戸棚の奥などに時折見られるというトウフ大の焦げ茶色の塊。「麻薬的な輝き」を持ち、じっと眺めていると表面が常にむくむくとざわついているのが分かる。(Wikipedia「太陽の塔」項目より)

もしもこんなものをプレゼントされた日には…(以下略)

このむくつけき男達と比べたらどんな人もきっと優越感を覚えるに違いないですし、「ええじゃないか」気分で一人お酒を飲んで踊り狂いたくなるかもしれません。

爽やかな読後感は決して得られませんが、とてもオススメの一冊です。

 

②イサク・ディーネセン/バベットの晩餐会(ちくま文庫)

バベットの晩餐会 (ちくま文庫)

バベットの晩餐会 (ちくま文庫)

もう、クリスマスって本来こうあるべきじゃないかと。

読み終えた後、急に大きなスーパーに買い物に出かけて、じっくり時間をかけて料理したくなるかもしれないし、よし、仕事しようとなるかもしれないし、小説世界の美しさに魅せられて映画を借りにTSUTAYAに走るかもしれません。

 舞台は田舎の牧師館。清貧を重んずる敬虔なクリスチャンの老姉妹に仕えた元王侯貴族のバベットが富くじで当てたお金で一夜限りのクリスマスディナーを振る舞うというお話です。

その筆致は、ワルツのリズムを彷彿とさせるような、優雅で、伸びやかさがあり、出てくる料理がとてもおいしそうでたまりません。

完璧なフレンチのフルコースを振る舞うのですが、バベットの料理人としての矜持が何とも男前というか(女性ですが)、そのプロフェッショナリズムに痺れるんです。

 

③R・D・ウィングフィールド/クリスマスのフロスト(創元推理文庫)

クリスマスのフロスト (創元推理文庫)

クリスマスのフロスト (創元推理文庫)

これ、最近読んだばかりなのですが、正直クリスマスシーズンが舞台なのに、クリスマス感はゼロ。

でもこの分厚い警察小説を一気に読み切る充実感は読書の醍醐味ですし、仕事していて、正直クリスマスどころじゃないんだこっちは!と吠えたくなる雰囲気には、経験したことある人には共感できるんではないでしょうか。

物語はイギリスの架空の田舎町デントンで女の子が行方不明になり、赴任してきた警察庁の甥っ子のおぼっちゃんと一緒に警部としてフロストが担当になるところから始まります。

事件を捜査するにつれて様々な案件が芋づる式に発生し、30年以上前の遺体の骨は発見されるは、誘拐事件は起こるはでもう大変!どうなるのかはらはら見守っているうちに、最後には拡げた風呂敷は見事に綺麗に片付いていきます。

ただ、この作品の魅力の9割は書類仕事が苦手で下ネタばかりいって周りを困らせるフロスト警部に詰まっています。

フロストは人間的にダメなところもたくさんあるのですが、なんだかんだ仕事熱心で、周りへの気配りもできて、弱者の気持ちに歩み寄ることのできる人間味溢れるキャラクターで、なんとも憎めない、どころかくせになる魅力を秘めているんですよね。

面白かったらシリーズなのでクリスマスの1日、延々と読書に耽ることもできてしまいます。

 

読書で広がる妄想クリスマス

外に出て、誰かと月並みなクリスマスを過ごすのもよいけれど、クリスマスを舞台にしたこんな作品を読んで、非日常の世界に想いを馳せるのもなかなか楽しいものです。

残念ながらクリスマスには大切な人と過ごす予定が!という方はもちろん現実の予定を楽しんでいただいて、これらの本はぜひクリスマスシーズンのうちにお手に取ってみていただければ幸いです。