あやしうこそものぐるほしけれ。

心に浮かびゆくよしなしごと

11月読んだ本まとめ(読書メーター)

11月はもう年の瀬ということでこれは読んでおきたかった!という本を中心に読んでいきました。

昨年から芥川賞作品を意識的に読もうと思って、「春の庭」「爪と目」「火花」「スクラップ・アンド・ビルド」と読んできて「蛇を踏む」がおそらく今年最後に読む芥川賞作品です。

ずっと読みたいと思って購入するかを検討していた「きみは赤ちゃん」「とにかくうちに帰ります」は安定の面白さで、年間ベスト20には間違いなく入りそうです。

 

2015年11月の読書メーター
読んだ本の数:6冊
読んだページ数:1506ページ
ナイス数:564ナイス

蛇を踏む (文春文庫)蛇を踏む (文春文庫)感想
踏んだ蛇が化けて自宅に棲みつくという、こんなにファンタジックな芥川賞作品があるのかと、1頁目から驚きましたが、中盤から納得。非現実を描きながらぬらぬらとした粘膜や匂いまで人の妖艶さを時に不快なほどに克明にリアルに描く姿勢は著者の作品で一貫しています。どの作品も種の境界はもちろん、生物と無生物、存在と不在の壁すらするりと超えていき小説というより散文詩のような広がりを持っています。収録作の中では気配は残したまま時々姿を消す家族の不気味な日常を綴った「消える」がふわふわと心地よいリズムが感じられて好みです。
読了日:11月3日 著者:川上弘美


とにかくうちに帰ります (新潮文庫)とにかくうちに帰ります (新潮文庫)感想
《うちに帰りたい。切ないぐらいに、恋をするように、うちに帰りたい》ふかふかのベッドを宣伝するコピーのようですが、これは、嵐でバスと電車は運休、近くの橋も閉鎖して見捨てられた埋立地から徒歩で脱出を試みる会社員の言葉です。偶然一緒に帰ることになる2人組の間に生まれる戦友的絆が素敵。前半の小品、デスクの文房具を悪気なく拝借してしまいこむ同僚へ密かに怒りをつのらせるOLの描写も巧みで、紛失していたペンを遂に見つけて「うぉぇあ」と叫ぶところは思わず吹き出しました。津村氏の作品の底知れぬ魅力に夢中です。大好きです!!
読了日:11月12日 著者:津村記久子


きみは赤ちゃんきみは赤ちゃん感想
壮絶なつわり、マタニティブルー、激太り、身体に生じる恐ろしい変化、帝王切開後の腹の痛み、授乳の痛み、育児での睡眠不足、産後クライシス、初めての発熱でのパニックなどなど、それはもう9割方はつらく苦しい妊娠出産育児の日々が言葉を尽くして赤裸裸に語り尽くされています。最初は子どもを生むことに恐ろしく暗い気持ちになりましたが、読み終えると不思議と残り1割で綴られた息子への愛おしさ、そしてこの上ない幸せな気持ちばかりが残り、あぁ生きるってそういうことなんだなとしみじみ。私にもいつかこんな幸不幸が訪れるのでしょうか。
読了日:11月14日 著者:川上未映子


ファイアスターター湯川さん (Kindle Single)ファイアスターター湯川さん (Kindle Single)感想
中田永一というよりは完全に乙一。彼のセンスと才能をもってすればこのくらいの短編、一日あれば書けるんだろうなぁという軽い読み心地ですが、コミック1冊分くらいの充実感があり、KindleSingleでタダで読めるのは嬉しい。管理人のバイトをする貧しい大学生の主人公がパイロキネシスという炎を操る超能力をもつ美少女、湯川さんと出逢うことから始まるボーイミーツガールストーリー。湯沸し器→湯川四季という名付けはどうかと思いますが、想像以上にハードボイルドな展開に手に汗握りました。Kindleプライム会員の方はぜひ。
読了日:11月15日 著者:中田永一


本質を見通す100の講義本質を見通す100の講義感想
つくづく感服いたしますのは100個の面白いお話をたんたんと書き続けるそのライティング基礎体力の高さとネタの引き出しの多さ、思索の深さについてです。2年先まで何を書くか決めているという、緻密に計画したことに対して努力できる著者の才能が羨ましい。水溜りを例に収束計算が安定するまでの理論を説明し、そこから《今日は少しだけ損をしても、少しだけ我慢しても、明日にはもっと望む状況があるのではないか》と、人生の教訓へと飛躍する理系的論理的思考が随所で発揮されてるところが文系の私には大変面白く沢山の気付きがあります。
読了日:11月24日 著者:森博嗣


クリスマスのフロスト (創元推理文庫)クリスマスのフロスト (創元推理文庫)感想
読み終えるのが惜しい!終始、愉快な警察小説でした。前評判があまりに悪かったせいか、私にはフロストが人間臭くて仕事熱心で誰からも好かれる愛らしいおっさんという印象で言うほどダメ人間には思えませんでした。こういう管理職不向きだけど現場で力を発揮するタイプの人、いるだろうなぁと。事件自体はなかなかに残酷で、真相を聞いても人間の醜さを突きつけられるばかりで呆気ないものでしたが、フロストがバタバタと走り回ると急に周囲がコメディになる感じがくせになる。シリーズの続きも好評のようで、またこの世界に浸れるのが嬉しい。
読了日:11月28日 著者:R.Dウィングフィールド

12月はいよいよ最終月。そろそろ年間ベストを考えてわくわくする。

Kindleを購入するまで読書量がいつもより落ちていたのですが、1年で何冊読めるかな??