あやしうこそものぐるほしけれ。

心に浮かびゆくよしなしごと

【妄想読書】もしも正月にこたつで気合いを入れ直すなら

クリスマスを過ぎるとあっという間に年末気分ですね。もう時が経つのが早すぎて怖い。

妄想シチュエーションに合わせてオススメの厳選3冊を紹介するこのコーナー、今回は妄想でも何でもなくて恐れ入りますが、正月にいざ気合いを入れ直そう!という気分のときにぜひ読んでいただきたい本です。

 

妄想シチュエーション

○お正月休みに実家のこたつで蜜柑食べながらまったり。

○正月特番見るのではなく、ある程度まとまった時間を有意義に使いたい。

○最近気持ちが弛んでいるので年始に心機一転、気合いを入れ直したい。

 

そんな時はこんな本

○この1年の抱負を語るための材料になる本

○意識高い系上等!「新年の1冊目に」とSNSでつぶやきたくなる本

○持ち歩かないので多少分厚くてもOK

 

オススメしたいこの3冊

①慎泰俊/働きながら、社会を変える。(英治出版

働きながら、社会を変える。――ビジネスパーソン「子どもの貧困」に挑む

働きながら、社会を変える。――ビジネスパーソン「子どもの貧困」に挑む

 何となくサラリーマンしてるけど、このままでいいのかな、何か社会の役に立てることやってみようかな、でも何したらいいかなと二の足を踏んで時が過ぎていくばかりの方に。

外資系金融機関で働いていた26歳の著者が同世代の仲間のスキルを活かし、空き時間を集めて貧困をなくすチャレンジをしようと立ち上がるまでに具体的に何を考え、何をしたのかについて書いた本です。

取り組むテーマに選んだのは、児童養護施設を通じて知った、「子どもの貧困」問題。養護施設の子供たちの機会損失の実態は知れば知るほど胸が痛みます。

筆者の起こしたアクション、実体験(実際に養護施設で働いてみる)と統計的データ(外資金融で学んだリサーチスキルを活かした綿密な数字)に基づいた深い考察が綴られているのですが、具体的でありながら、他の問題を調べる際にも役立ちそうという意味で、とても汎用性があり、学びの多い一冊です。

本業を持ちながらの活動でも、社会に大きなインパクトをもたらすことは可能なのではないだろうか

独り言みたいな声を挙げるだけでも、立派なアクションだ。

読み終える頃には、こんな強いメッセージに一歩進もうという気持ちが鼓舞され、どんなアクションを起こそうかと、うずうずしてしまうに違いありません。

 

②ローラン・ビネ/HHhH (プラハ、1942年) (東京創元社

HHhH (プラハ、1942年) (海外文学セレクション)

HHhH (プラハ、1942年) (海外文学セレクション)

終わりの見えない暗くて長いトンネルのように始まっていくヒトラーの統治。ハイドリヒの台頭、ナチスによるチェコ占領、類人猿作戦、そしてその報復の顛末まで。時に何が真実かを迷いながら、時に卑怯な歴史上の人物へ激怒しながら、時に定められた虚しい結末を書くことに抵抗を感じながら、1人の執筆者が時間をかけ、徹底的に《歴史》を描き出す…その過程までもを収める意欲的な作品です。

 気合いを入れ直すというよりも、正座するくらいの気合いを入れて読んでいただきたい。

いや、しかし。とても分厚いし歴史がテーマで難しそうだし、タイトルも意味わかんないしで、敬遠される可能性大ですが、2014年本屋大賞翻訳小説部門第1位にも選出されるくらい、読んだ人(私もその例にもれず)は絶賛している作品なので、だまされたと思って読んで欲しいのです!!!!

前半は少しとっつきにくい印象を受けるかもしれないですが、徐々にのめりこみ、最後の100ページくらいはノンストップで読めるくらいのリーダビリティがあります。

この作品の何がすごいって、これまであまり描かれてこなかったナチス時代の類人猿作戦をめぐる出来事も凄まじいのですが、その歴史と向き合う執筆者の苦悩に読者はたびたび引き寄せられるのです。

歴史的真実を理解しようとして、ある人物を創作することは、証拠を改ざんするようなものだ。

僕も地下の納骨堂に入って、パラシュート舞台員とともに日々を過ごし、彼らの会話の内容や、じめじめとして寒い地下での暮らしがどんなものかをここに書き記してみたい。……でも、それは無理な話だ。そういうことについてはほとんど何も資料がないから。ハイドリヒが死んだということを知らされたとき、どんな反応を示したかについても僕は知らない。それがわかれば、僕のこの本のなかでもとりわけ強烈な印象を与える場面になったはずなのに。

ただそこにある真実が書きたい。誰が正義で、何が悪か、という話ではなく、そこには1人1人の人生、時にはあまりに儚く絶たれてしまう命があるだけなのだから。

けれども、どれほど冷静に、たんたんと描こうとしても、類人猿作戦で最後まで戦った英雄達に肩入れせずにはいられない、作者の人間らしさがまた心憎いのです。

読めば、生きる意味、働く意味、社会や政治との関わり方などを自身に問い直すのには絶好のきっかけになるのではないでしょうか。

 

③岡野宏文、豊崎由美/百年の誤読 海外文学編(アスペクト)

百年の誤読 海外文学編

百年の誤読 海外文学編

ラストはこちら。

新年って読書が好きな人なら、今年は何を読もうかな。ちょっと難しい本にもチャレンジしてみたいな。と、読書についての抱負も語りたくなるものですよね?

もともとブックレビュー本が大好きでいろいろ読んでいる中で、そんなタイミングにぴったりなのが「20世紀に発表された世界の名作文学100タイトルを希代の本読み2人が徹底分析し、その真価を問い直す」こちらかなと思います。

まず410ページという辞書のような分厚さ。持ち歩くには少々不便です。しかし、こたつで暖をとりながらぬくぬく読むのであればノープロブレム!

そして分厚いながらも、読んでみるとざっくばらんな対談形式なので決して読み辛さはなく好きな章を拾い読みしているうちにあっという間に読み終わってしまうので、新年に読む本をチェックしようくらいの軽い気持ちで読み始めることができます。

ちなみに、日本文学編もあるのですが海外文学編の方が面白いです。

もともと海外文学好きの著者のお二人が語っているので、“メッタ斬り”スタイルでばしばし批判されている本は意外に少なく、なぜこの本を読むべきなのかという情熱にあふれたコメントが多いのです。

あとは海外文学を読むのって特にあまり読まない人にとってはハードル高いと思うのですが、まずは1冊いってみようか、という気分にさせられます。

逆にいわゆる世界文学全集で幅を利かせている本は、メッタ斬りされている場合も多く、たとえば「ジャン・クリストフ」は読まなくてもよさそうで、密かにいつかは読まなければと思っていた私はちょっと肩の荷がおりました。

目標は高く!いつかはここでオススメされてる本は全部読んでやるのだ!くらいの気持ちで読みたい本をどんどんストックしていきましょう。

 

新年の読み初めで心機一転!

私は毎年何冊読めたかを計測し、年間ベストも考えているので、また0に戻ってスタートを切るというのは大きな節目です。

書き初めならぬ読み初めで何を読むかでその1年の考え方も決まってくるような気がして毎年悩むのです。(まだ来年は決めてない)

人生も読書も心機一転して、幸多き日々が過ごせますように。ますます素敵な本とも出逢えますように。