あやしうこそものぐるほしけれ。

心に浮かびゆくよしなしごと

【妄想読書】もしも大学受験追い込み中に息抜きするなら

私にはもはや遠い日の思い出になってしまいましたが、この時期いよいよ受験の追い込みで受験生は大変ですよね。

でもあの頃の追い込まれて頑張った経験って今振り返ってみるとある意味、青春してるなぁと懐かしく思います。そんな私は随分年をとってしまったみたい。

というわけで、改めてその頃の自分の状況を思い出し、勉強のちょっとした息抜きに自分を鼓舞するのにぴったりな3冊を考えてみました。

 

妄想シチュエーション

○受験追い込み!がんばらないと第一志望には受からない状況。

○移動時間の電車もほとんど勉強に費やす中、夜寝る前の30分だけ現実逃避の読書タイム

○大学で何を勉強しようかなーどんなサークル入ろうかなぁと想像を膨らませる日々

 

こんな時はどんな本?

○大学に入ってからのことをイメージできる内容の本

※ただしまだ夢見ていたいタイミングなのでリアリティありすぎるのはNG

○読み終わったら、よし、勉強しようと気持ちを切り替えられる本

○勉強に差し障るので1冊ですっきり終わる本

 

オススメしたいこの3冊 

福澤諭吉学問のすすめ(ちくま新書)

学問のすすめ 現代語訳 (ちくま新書)

学問のすすめ 現代語訳 (ちくま新書)

えっそんな真面目な本をいきなり!?と思われた方もいるかもしれません。

かくいう私も、難しい本に違いないと決めつけて、社会人になって随分たってから青空文庫で読んだのですが、どうしてもっと早く読まなかったんだろうと激しく後悔したのでまず何より先に推すことにしました。(自分の卒業大学の創業者なのに大学時代にも読まなかった私。)

私は、当時のベストセラーなので時代の言葉で読んでこそ意義があると思い、現代語訳でなく原文で読みましたが、受験生はただでさえ勉強大変なのに、ここで苦しむ必要はないと思い、現代語訳の方をチョイスしました。

特に五篇くらいまでは、当時、洋楽が押し寄せる中で内に篭りがちだった日本人に、独立の意味、国民と国家の関係、真の学問のあり方等をわかりやすく説いており、今なお通用する主張に幾たびもはっとさせられました。

今でもこれを読んであぁちゃんと勉強したい!という欲が湧いてくるので、まだそれが後悔になっていない受験生のうちにぜひ読んでいただきたいのです。

独立とは自分にて自分の身を支配し他によりすがる心なきを言う。(略)全国の人はみな、よりすがる人のみにてこれを引き受くる者はなかるべし。これを譬えば盲人の行列に手引きなきがごとし、はなはだ不都合ならずや。

方今わが国の形成を察し、その外国に及ばざるものを挙ぐれば、いわく学術、いわく商売、いわく法律、これなり。世の文明はもっぱらこの三者に関し、三者挙がらざれば国の独立を得ざること識者を俟たずして明らかなり。(略)けだし一国の文明はひとり政府の力をもって進むべきものにあらざるなり。

そもそも事をなすに、これを命ずるはこれを諭すに若かず、これを諭すはわれよりその実の例を示すに若かず。

学問の本趣意は読書のみにあらずして、精神の働きにあり。

人の仕事を見て心に不満足なりと思はば、みずからその事を執りてこれを試むべし。

 特に最後のフレーズは仕事をしている私もはっとさせられました。当事者意識、大事です。

 

梨木香歩/村田エフェンディ滞土録(角川文庫)

村田エフェンディ滞土録 (角川文庫)

村田エフェンディ滞土録 (角川文庫)

さて、ここからは本当の息抜きです。笑

まず文系の方にはこちら。梨木香歩さんの名作「村田エフェンディ滞土録」です。

日本がようやく治外法権の撤廃を認められた頃、トルコで考古学を学ぶ機会を得た村田の滞土録。

英国夫人の家に鸚鵡と、ギリシャ人、ドイツ人、トルコ人、そして村田が下宿し、相異なる価値観が共有されていきます。

学問を通じて全くバックグラウンドの違う人たちが繋がっていき、そこで繰り広げられる知的で刺激的な会話の数々に向学心が喚起されます。

著者のエッセイを彷彿とさせる異文化共存の在り方をじっくり考えさせられる挿話の数々とよく整えられた穏やかな文体が心地よく、時折起こる狐や火の竜などの神々にまつわる神秘的なできごとに胸は高鳴るばかり。

そして、トルコでの和やかな日々、からの思いも寄らぬ切ない幕切れに、鸚鵡との再会に、抑えようもなくこみあげてくる涙なのでした。

 

野尻抱介/南極点のピアピア動画(ハヤカワ文庫JA

南極点のピアピア動画 (ハヤカワ文庫JA)

南極点のピアピア動画 (ハヤカワ文庫JA)

理系の方にはこちら。

ピアピア動画(=ニコニコ動画)と小隅レイ(=初音ミク)への愛が詰まった夢とロマンのSF連作短篇集をおすすめします。

小隅レイが南極へいき、宇宙へいき、クジラと会話して、宇宙人との遭遇を果たし、そして増殖する・・・。第1章から3章までもすばらしいのですが、最終章で大円団へと向かう高揚感あふるる展開にwktkが止まりません。(この本を読むとこういう言葉遣いがうつります)

サブカルならぬサブサイエンスとでもいえばよいのか、ニコニコな人たちが面白いというだけで費やすなみなみならぬエネルギーに圧倒されます。

科学が災厄をもたらすようなSFもそれはそれで様々な気付きがあり良いのですが、学問を学ぶことのシンプルな喜びや、科学の夢とロマンがぎゅっと詰まったこういうSFがあると、生きることにポジティブになれる気がします。

ドワンゴ会長の皮肉たっぷりの解説まで含め大変楽しませて頂きました。

 

少年よ大志を抱け

実際に大学に入学すると、想い描いていたほどには、キラキラな大学生活が訪れるわけではないのですが。

とにかく入学前は存分に夢を見たらいいと思うのです。

でもどんなに夢を抱いても、勉強しないと夢見る大学生にはなれないので、息抜きが終わったら、ちゃんと勉強に戻りましょう。

と、偉そうなことを言えるほど、集中力あるタイプではないのですが。