あやしうこそものぐるほしけれ。

心に浮かびゆくよしなしごと

11月読んだ本まとめ(読書メーター)

11月はもう年の瀬ということでこれは読んでおきたかった!という本を中心に読んでいきました。

昨年から芥川賞作品を意識的に読もうと思って、「春の庭」「爪と目」「火花」「スクラップ・アンド・ビルド」と読んできて「蛇を踏む」がおそらく今年最後に読む芥川賞作品です。

ずっと読みたいと思って購入するかを検討していた「きみは赤ちゃん」「とにかくうちに帰ります」は安定の面白さで、年間ベスト20には間違いなく入りそうです。

 

2015年11月の読書メーター
読んだ本の数:6冊
読んだページ数:1506ページ
ナイス数:564ナイス

蛇を踏む (文春文庫)蛇を踏む (文春文庫)感想
踏んだ蛇が化けて自宅に棲みつくという、こんなにファンタジックな芥川賞作品があるのかと、1頁目から驚きましたが、中盤から納得。非現実を描きながらぬらぬらとした粘膜や匂いまで人の妖艶さを時に不快なほどに克明にリアルに描く姿勢は著者の作品で一貫しています。どの作品も種の境界はもちろん、生物と無生物、存在と不在の壁すらするりと超えていき小説というより散文詩のような広がりを持っています。収録作の中では気配は残したまま時々姿を消す家族の不気味な日常を綴った「消える」がふわふわと心地よいリズムが感じられて好みです。
読了日:11月3日 著者:川上弘美


とにかくうちに帰ります (新潮文庫)とにかくうちに帰ります (新潮文庫)感想
《うちに帰りたい。切ないぐらいに、恋をするように、うちに帰りたい》ふかふかのベッドを宣伝するコピーのようですが、これは、嵐でバスと電車は運休、近くの橋も閉鎖して見捨てられた埋立地から徒歩で脱出を試みる会社員の言葉です。偶然一緒に帰ることになる2人組の間に生まれる戦友的絆が素敵。前半の小品、デスクの文房具を悪気なく拝借してしまいこむ同僚へ密かに怒りをつのらせるOLの描写も巧みで、紛失していたペンを遂に見つけて「うぉぇあ」と叫ぶところは思わず吹き出しました。津村氏の作品の底知れぬ魅力に夢中です。大好きです!!
読了日:11月12日 著者:津村記久子


きみは赤ちゃんきみは赤ちゃん感想
壮絶なつわり、マタニティブルー、激太り、身体に生じる恐ろしい変化、帝王切開後の腹の痛み、授乳の痛み、育児での睡眠不足、産後クライシス、初めての発熱でのパニックなどなど、それはもう9割方はつらく苦しい妊娠出産育児の日々が言葉を尽くして赤裸裸に語り尽くされています。最初は子どもを生むことに恐ろしく暗い気持ちになりましたが、読み終えると不思議と残り1割で綴られた息子への愛おしさ、そしてこの上ない幸せな気持ちばかりが残り、あぁ生きるってそういうことなんだなとしみじみ。私にもいつかこんな幸不幸が訪れるのでしょうか。
読了日:11月14日 著者:川上未映子


ファイアスターター湯川さん (Kindle Single)ファイアスターター湯川さん (Kindle Single)感想
中田永一というよりは完全に乙一。彼のセンスと才能をもってすればこのくらいの短編、一日あれば書けるんだろうなぁという軽い読み心地ですが、コミック1冊分くらいの充実感があり、KindleSingleでタダで読めるのは嬉しい。管理人のバイトをする貧しい大学生の主人公がパイロキネシスという炎を操る超能力をもつ美少女、湯川さんと出逢うことから始まるボーイミーツガールストーリー。湯沸し器→湯川四季という名付けはどうかと思いますが、想像以上にハードボイルドな展開に手に汗握りました。Kindleプライム会員の方はぜひ。
読了日:11月15日 著者:中田永一


本質を見通す100の講義本質を見通す100の講義感想
つくづく感服いたしますのは100個の面白いお話をたんたんと書き続けるそのライティング基礎体力の高さとネタの引き出しの多さ、思索の深さについてです。2年先まで何を書くか決めているという、緻密に計画したことに対して努力できる著者の才能が羨ましい。水溜りを例に収束計算が安定するまでの理論を説明し、そこから《今日は少しだけ損をしても、少しだけ我慢しても、明日にはもっと望む状況があるのではないか》と、人生の教訓へと飛躍する理系的論理的思考が随所で発揮されてるところが文系の私には大変面白く沢山の気付きがあります。
読了日:11月24日 著者:森博嗣


クリスマスのフロスト (創元推理文庫)クリスマスのフロスト (創元推理文庫)感想
読み終えるのが惜しい!終始、愉快な警察小説でした。前評判があまりに悪かったせいか、私にはフロストが人間臭くて仕事熱心で誰からも好かれる愛らしいおっさんという印象で言うほどダメ人間には思えませんでした。こういう管理職不向きだけど現場で力を発揮するタイプの人、いるだろうなぁと。事件自体はなかなかに残酷で、真相を聞いても人間の醜さを突きつけられるばかりで呆気ないものでしたが、フロストがバタバタと走り回ると急に周囲がコメディになる感じがくせになる。シリーズの続きも好評のようで、またこの世界に浸れるのが嬉しい。
読了日:11月28日 著者:R.Dウィングフィールド

12月はいよいよ最終月。そろそろ年間ベストを考えてわくわくする。

Kindleを購入するまで読書量がいつもより落ちていたのですが、1年で何冊読めるかな??

【妄想読書】もしも一人ぼっちのクリスマスを過ごすなら

クリスマスってそんな都合良く一緒に過ごしてくれる人がいるわけじゃないですよね。全く予定入ってないけど、でもわざわざ適当な人と過ごして虚しい気持ちになるくらいなら一人でずっと家から出ないという選択をしたい。そんな気分のあなたに。

本はいつも優しく寄り添ってくれるのです。

 

妄想シチュエーション

○クリスマスイブの休日、1日家で過ごすことに。

○クリスマス前後も仕事に追われていて慌ただしい毎日。

○恋愛もしてないし、別に今は必要ないけどなんか淋しい気持ちも。

 

そんな時はこんな本

○クリスマスシーズンが描かれた本

○ほっこりするラブストーリーはNG。共感度高い癖のある作品。

○対象年齢は社会人以上。

 

オススメしたいこの3冊

森見登美彦太陽の塔新潮文庫

太陽の塔 (新潮文庫)

太陽の塔 (新潮文庫)

帯で声高に訴えられているすべての失恋男だけでなく、大学生ってこんなはずじゃなかった、と感じたことのある全ての人に読んで欲しいです。

クリスマスに彼女のいない淋しさをこんなにコメディにファンタジックに描いた作品が他にあるでしょうか。

何かしらの点で、彼らは根本的に間違っている。 なぜなら、私が間違っているはずがないからだ。 

 書き出しからしてこれですから。何故こんなに上から目線なのか、阿呆じゃないかと思いつつ、くすりとしてしまった人は、きっとこの作品を楽しめるはずです。

ストーリーとしては袖にされた水尾さんの研究(ただのストーキング)に勤しむモテない京大生(5回生で休学中、学業もぐだぐだ)の日常を切り取り、謎のファンタジックな展開に昇華されていくくだらない作品なのですが、ただの「阿呆」で切り捨てるにはもったいないくらい文体が独特(それをかつて「森見節」と呼びました)で、とにかく面白い。

特に面白いのが途中であらわれたストーカーのライバル、遠藤とのくだらない嫌がらせの応酬。誰もがきっとトラウマになる伝説の嫌がらせ、「ゴキブリキューブ」プレゼント作戦というのがあって、これがもうひどい。

戸棚の奥などに時折見られるというトウフ大の焦げ茶色の塊。「麻薬的な輝き」を持ち、じっと眺めていると表面が常にむくむくとざわついているのが分かる。(Wikipedia太陽の塔」項目より)

もしもこんなものをプレゼントされた日には…(以下略)

このむくつけき男達と比べたらどんな人もきっと優越感を覚えるに違いないですし、「ええじゃないか」気分で一人お酒を飲んで踊り狂いたくなるかもしれません。

爽やかな読後感は決して得られませんが、とてもオススメの一冊です。

 

②イサク・ディーネセン/バベットの晩餐会ちくま文庫

バベットの晩餐会 (ちくま文庫)

バベットの晩餐会 (ちくま文庫)

もう、クリスマスって本来こうあるべきじゃないかと。

読み終えた後、急に大きなスーパーに買い物に出かけて、じっくり時間をかけて料理したくなるかもしれないし、よし、仕事しようとなるかもしれないし、小説世界の美しさに魅せられて映画を借りにTSUTAYAに走るかもしれません。

 舞台は田舎の牧師館。清貧を重んずる敬虔なクリスチャンの老姉妹に仕えた元王侯貴族のバベットが富くじで当てたお金で一夜限りのクリスマスディナーを振る舞うというお話です。

その筆致は、ワルツのリズムを彷彿とさせるような、優雅で、伸びやかさがあり、出てくる料理がとてもおいしそうでたまりません。

完璧なフレンチのフルコースを振る舞うのですが、バベットの料理人としての矜持が何とも男前というか(女性ですが)、そのプロフェッショナリズムに痺れるんです。

 

③R・D・ウィングフィールド/クリスマスのフロスト(創元推理文庫

クリスマスのフロスト (創元推理文庫)

クリスマスのフロスト (創元推理文庫)

これ、最近読んだばかりなのですが、正直クリスマスシーズンが舞台なのに、クリスマス感はゼロ。

でもこの分厚い警察小説を一気に読み切る充実感は読書の醍醐味ですし、仕事していて、正直クリスマスどころじゃないんだこっちは!と吠えたくなる雰囲気には、経験したことある人には共感できるんではないでしょうか。

物語はイギリスの架空の田舎町デントンで女の子が行方不明になり、赴任してきた警察庁の甥っ子のおぼっちゃんと一緒に警部としてフロストが担当になるところから始まります。

事件を捜査するにつれて様々な案件が芋づる式に発生し、30年以上前の遺体の骨は発見されるは、誘拐事件は起こるはでもう大変!どうなるのかはらはら見守っているうちに、最後には拡げた風呂敷は見事に綺麗に片付いていきます。

ただ、この作品の魅力の9割は書類仕事が苦手で下ネタばかりいって周りを困らせるフロスト警部に詰まっています。

フロストは人間的にダメなところもたくさんあるのですが、なんだかんだ仕事熱心で、周りへの気配りもできて、弱者の気持ちに歩み寄ることのできる人間味溢れるキャラクターで、なんとも憎めない、どころかくせになる魅力を秘めているんですよね。

面白かったらシリーズなのでクリスマスの1日、延々と読書に耽ることもできてしまいます。

 

読書で広がる妄想クリスマス

外に出て、誰かと月並みなクリスマスを過ごすのもよいけれど、クリスマスを舞台にしたこんな作品を読んで、非日常の世界に想いを馳せるのもなかなか楽しいものです。

残念ながらクリスマスには大切な人と過ごす予定が!という方はもちろん現実の予定を楽しんでいただいて、これらの本はぜひクリスマスシーズンのうちにお手に取ってみていただければ幸いです。

 

読書感想文なんてなくなればいいのに。

と、大人になってよく思うようになりました。

ここでいう「読書感想文」というのは、学校で夏休みに400字詰め原稿用紙4枚とかで書く、狭義の意味での読書感想文のことです。

私は読書メーターで500件近いレビューを7年くらい書き続けているけど未だにあの時の読書感想文ってなんだったんだろうと思うのです。

そもそも読書感想文をかかせる意味ってなんでしょうか?

 

http://www.flickr.com/photos/81217355@N00/16578701831

photo by RW Sinclair

 

 

読書の楽しみを知ってもらうため?

もしそれが目的なら、逆効果だと思うのです。

なぜなら読書が勉強の一部のような印象を与えてしまうから。

私が中学の読書感想文で感想を書いて覚えているのは芥川龍之介杜子春 』、ヘミングウェイ老人と海 』くらいでしょうか。

どちらも素晴らしい書籍ですが、中学で読むには少し早い気がしましたし、いや、というよりもこれで感想文を書くのだというある種、邪な気持ちが邪魔をして、本を純粋に楽しめなかったように思います。

たとえば小学6年生の時分に江國香織さんのエッセイを読んで少し背伸びした気持ちになったり、ケルト文化にはまって受験勉強の合間にケルト装飾の専門書を貪るように読んだり、そういう体験が読書の魅力を切り拓くように思うのです。

読書の楽しみを知ってもらうなら、もっと読書を娯楽の1つとして位置付けた方が良いのではないでしょうか。

たとえば、図書室に18禁の棚を作ってそこにラディゲ『肉体の悪魔』や桜庭一樹私の男』を置いて下心むんむんの学生をおびき寄せるとか。

アニメ化やドラマ化した作品という切り口で、カズオ・イシグロわたしを離さないで』や太宰治人間失格』などを紹介し、原作と映画どちらがいいかという不毛な話し合いをするとか。

芥川賞を漫才師の又吉さんが受賞するのもその意味でとても意義のあることだと思います。読書というのは、文字を読んで想像するだけで泣いたり笑ったり手に汗握ったりできる何よりコスパの良い古典的な娯楽なのです。

 

文章力をつけてほしいから?

本の感想を書くということにより文章力をつけさせたいなら、もっと効率良いやり方があるでしょう。

あらすじをかくというのはとてもライティング能力を問う作業だと思うので、たとえば感想なんて書かずにあらすじを書く練習をひたすらするとかどうでしょう。

感想文を評価するってもう何を持って優れているという話なのかわからないし、評価軸が曖昧ですが、あらすじを書き出す力は明確に差が出るし、字数に合わせて言葉を加工するのは一生役に立つスキルだと思います。

あるいは、何か考えを述べるための文章力をつけるなら、もっと身近なテーマを主張にする練習をすると良いと思います。「バレンタインチョコを学校に持ってくるのに賛成か、反対か。その理由と共に述べよ。」とか「好きな芸能人は誰か、どういうところがどんな理由で好きなのか考えてみよう。」とか。その方が余程身近なトピックだし、その世代に合わせた深い議論ができるんではないでしょうか。

 

感受性を磨いてほしいから?

あのよくわからないけど自分の乏しい経験と結びつけて、感じてもいない優等生的な意見を述べるのって心底くだらないとあの頃も今も思います。

私の小学校時代の親友は、読書感想文ではないですが、こういう定型的な感想を押し付けてくる学校教育に反抗して、「私は嘘を書きたくありません」と徹底抗戦していたことを今思い出しました。

それは感受性を磨くという意味では対極に位置する感情の紡ぎ方で、本質的ではないと思います。本当はきっと大人達もわかっていると思うんです。確信犯的な匂いがします。

 

ここまで書いてきて改めて読書感想文のFAQを見てみました。

www.dokusyokansoubun.jp

なぜ読書感想文をかくのかという質問にこう返答されています。

書くことによって考えを深められるからです。読書感想文を書くことを通して思考の世界へ導かれ、著者が言いたかったことに思いをめぐらせたり、わからなかったことを解決したりできるのです。ですから読書感想文は「考える読書」ともいわれます。また、どんなに強く心を動かされても、時がたてばその記憶は薄れてしまいます。読書感想文は自分自身の記録です。読み返すことによって、いつでも「感動した自分」に出会うことができるのです。

うーん、もう気持ち悪いくらい優等生的!

 

本の感想を書き留めるのは素晴らしいことだと思う

正反対のことを言うようですが、個人的に本の感想を書き留めておき、さらにそれを発信するのはとても素晴らしいことだと、読書メーターのヘビーユーザーとして思います。

なぜなら読んだ本がどんなだったのか、言葉にしないとすぐに忘れてしまいますし、誰かに感想を伝えることで、その感想を読んだ誰かの新しい本との出逢いを提供できるかもしれません。

実際、私はこれまでにたくさんの未知の本との出逢いを読書メーターから得てきましたし、自身の感想を振り返ることで自分の軌跡を感じることができています。

だからこそ、夏休みの苦しい宿題の記憶がその行為を妨げる要因になってほしくないなぁと切に願うのです。

 

 

 

【妄想読書】もしも週末のカフェ散歩のお供にするなら

清澄白河に住むようになってから、土日はカフェ散歩に出かける機会が増えました。

もちろん、どんな本を持っていってもいいんですが、カフェ読書に似つかわしい本ってどんな本だろう?とオススメを考えてみました。

 

妄想シチュエーション

○カフェは古いアパートを改造したフカダソウカフェ

※実際清澄白河にあるオシャレカフェです。オススメです。

tabelog.com

○季節は秋!お散歩日和です。

○2時間くらいはまったり過ごしたい

○何読んでるの?と通りがかりのカフェ男子に声をかけられる可能性も!?

 

そんな時はこんな本

○カフェの雰囲気に合う落ち着きのある上品な本

※持ち歩くの分厚すぎるのはNG

○何を読んでるか聞かれるの大歓迎な自分ブランディングにもなる本

○のめり込みすぎてすごい形相になるといけないので、良い意味で軽い読み心地の本

 

オススメしたいこの3冊

三島由紀夫/不道徳教育講座(角川文庫)

不道徳教育講座 (角川文庫)

不道徳教育講座 (角川文庫)

まず少しでも本に興味のある人なら三島由紀夫を知らない人はいないだろうということをお伝えしたい。また私調べですが、三島由紀夫は「読書が趣味」を公言する年上の殿方からの受けが大変良いのです。

しかも読んでいるのが「潮騒」だとベタすぎて三島文学初心者感があるけど、このエッセイは知らない人が多くて渋い。 

逆にもし三島由紀夫を知っていても読んだことない普通の人(趣味が読書でない人)に話しかけられた場合でも安心です。

三島由紀夫っていってもこの本はユーモアたっぷりで面白いから難しくないですよ。たとえばこの章なんて…」と答えて、本の内容について話題を広げつつ、ガチガチの文学少女とは思われないよう演出できます。

つまり、話題に事欠かない1冊なのです。

で、漸く中身についてなのですが。

柔らかく、まるで太宰のようにお茶目な三島先生に出逢える至高の1冊でございます。

だんだんと不道徳ではなく道徳についてのエッセイになってきてるのもご愛嬌。そして遊び心溢るる文章の中にも日本語を自在に操る三島文学がその片鱗を覗かせていて時折はっとさせられる。

一番好きなのは「教師を内心バカにすべし」の

先生という種族は、諸君の逢うあらゆる大人のなかで、一等手強くない大人なのです。ここを間違えてはいけない。

というところ。本当にそうあってほしいと心から思います。

次にぐっときたのがこちら。

やたら人に弱味をさらけ出す人間のことを、私は躊躇なく「無礼者」と呼びます。(略)どんなに醜悪であろうと、自分の真実の姿を告白して、それによって真実の姿をみとめてもらい、あわよくば真実の姿のままで愛してもらおうなどと考えるのは、甘い考えで、人生をなめてかかった考えです。

 一見不道徳的な言説から人間の奥深さと道徳の真の在り方を考えました。

 

星野源/そして生活はつづく(文春文庫)

そして生活はつづく (文春文庫)

そして生活はつづく (文春文庫)

星野源さんって歌手の方なのですがご存知ですか?

私はこの本から星野さんの曲を聞くようになりました。

最近芥川賞を受賞された又吉さん初め、芸能人のかいたエッセイはたくさんあるのですが星野さんのエッセイはサブカルとオシャレのちょうど真ん中の良い位置にポジショニングしていて、まさにカフェがぴったりだと思うのです。

そしてこのエッセイ、超笑えます。

公共の場所で読むならその点だけは要注意です。

「料金支払いはつづく」でダメ人間ぶりを嬉々として露呈していたかと思えば、あとがきで"ちゃんとした大人"発言をどや顔でしてくる悪ふざけぶりや未解決のままの謎のブラジャー事件など。

けれど、お腹痛くて友達できなくて二足のわらじを不器用に履きながら、沢山のことを思索し、書き留めるその姿勢にぐっときて、ぴんと背筋が伸びる思いがすることもたびたびでした。

たとえば私がいま何をしていても気持ちよく、健康で、お金もあって、不自由なことなど一つもない暮らしをしているのならば、表現なんてしなくても全然いい。(略)視力の弱さは目が悪いということとは違う。それはその人に与えられたチャームポイントだ。そのチャームの集合体がその人であり、その人が生み出すものにダイレクトに影響を与える。せっかく自然に生まれた「感受性のチャームポイント」を矯正してしまうのはもったいない。 

Kがコーヒーを飲みながら言った。「ばかだからばかなことしか覚えていないんですよ。」私は耳を疑った。こんなに面と向かって人のことをばかと言える人がこの世にいるのか。(略)「確かに、演技にしても、作品づくりにしても、そのカップラーメンをストーブに置いちゃうようなばかな感じが役立ってると思うんですけどね。でも、ばかがばかに自信を持ったら終わりですよ。そんなの恥ずかしいですよ」すごい。機関銃のような正論が私の心を打ち抜いてゆく。私は今とてもばかにされているのに、なんだか気持ちがいいほどだ。

…Kさん素敵。

 

トルーマン・カポーティ村上春樹訳/ティファニーで朝食を新潮文庫

ティファニーで朝食を (新潮文庫)

 

ティファニーで朝食を (新潮文庫)

この流れでもうおわかりかと思うのですが、かの有名な「ティファニーで朝食を」、村上春樹訳というところがポイント! 

話題の幅広いですよね。村上春樹の訳はどうか、という話から、オードリーヘップバーンのあの映画の話、それから最近実写ドラマ化された漫画の「いつかティファニーで朝食を 1巻」がおもしろいよねーという話まで。

どんな作品なのかというと、“第二次大戦下のニューヨークで、居並ぶセレブの求愛をさらりとかわし、社交界を自在に泳ぐ新人女優ホリー・ゴライトリー”と同じアパートに住む駆け出し小説家が彼女とどう出逢い、関係を築いていったのかという話。

空を見上げている方が、空の上で暮らすよりはずっといいのよ。空なんてただからっぽで、だだっ広いだけ。そこは雷鳴がとどろき、ものごとが失せていく場所なの

ホリーの魅力に酔いしれる。それでも空を生きることを選ぶホリーの孤独さと意志の強さがたまらなく切ない。

村上春樹訳しか読んでないですが、訳はとても良いです!!

都会で孤独を感じたことのある女性ならきっと共感できる1冊です。

 

コミュニケーションツールとしての読書

というのは、あまり好きではないんですけど、 何読んでるの?って聞かれた時に、「へー…」と全く盛り上がらずに会話が終わると、巻き込み事故というか(聞いたのそっちなのに気まずくするなよ!)、自分につい責任を感じてしまいます。

カフェは公共の場所ですし、背表紙をはずしてあえてそういう隙をつくって、いざというときに備えるのも良いんじゃないかと思うのです。

それこそ妄想読書ですので、もしかしてそこで恋が始まる可能性にも存分に期待しておきませう(*´∀`*)

 

【妄想読書】もしも大学受験追い込み中に息抜きするなら

私にはもはや遠い日の思い出になってしまいましたが、この時期いよいよ受験の追い込みで受験生は大変ですよね。

でもあの頃の追い込まれて頑張った経験って今振り返ってみるとある意味、青春してるなぁと懐かしく思います。そんな私は随分年をとってしまったみたい。

というわけで、改めてその頃の自分の状況を思い出し、勉強のちょっとした息抜きに自分を鼓舞するのにぴったりな3冊を考えてみました。

 

妄想シチュエーション

○受験追い込み!がんばらないと第一志望には受からない状況。

○移動時間の電車もほとんど勉強に費やす中、夜寝る前の30分だけ現実逃避の読書タイム

○大学で何を勉強しようかなーどんなサークル入ろうかなぁと想像を膨らませる日々

 

こんな時はどんな本?

○大学に入ってからのことをイメージできる内容の本

※ただしまだ夢見ていたいタイミングなのでリアリティありすぎるのはNG

○読み終わったら、よし、勉強しようと気持ちを切り替えられる本

○勉強に差し障るので1冊ですっきり終わる本

 

オススメしたいこの3冊 

福澤諭吉学問のすすめ(ちくま新書)

学問のすすめ 現代語訳 (ちくま新書)

学問のすすめ 現代語訳 (ちくま新書)

えっそんな真面目な本をいきなり!?と思われた方もいるかもしれません。

かくいう私も、難しい本に違いないと決めつけて、社会人になって随分たってから青空文庫で読んだのですが、どうしてもっと早く読まなかったんだろうと激しく後悔したのでまず何より先に推すことにしました。(自分の卒業大学の創業者なのに大学時代にも読まなかった私。)

私は、当時のベストセラーなので時代の言葉で読んでこそ意義があると思い、現代語訳でなく原文で読みましたが、受験生はただでさえ勉強大変なのに、ここで苦しむ必要はないと思い、現代語訳の方をチョイスしました。

特に五篇くらいまでは、当時、洋楽が押し寄せる中で内に篭りがちだった日本人に、独立の意味、国民と国家の関係、真の学問のあり方等をわかりやすく説いており、今なお通用する主張に幾たびもはっとさせられました。

今でもこれを読んであぁちゃんと勉強したい!という欲が湧いてくるので、まだそれが後悔になっていない受験生のうちにぜひ読んでいただきたいのです。

独立とは自分にて自分の身を支配し他によりすがる心なきを言う。(略)全国の人はみな、よりすがる人のみにてこれを引き受くる者はなかるべし。これを譬えば盲人の行列に手引きなきがごとし、はなはだ不都合ならずや。

方今わが国の形成を察し、その外国に及ばざるものを挙ぐれば、いわく学術、いわく商売、いわく法律、これなり。世の文明はもっぱらこの三者に関し、三者挙がらざれば国の独立を得ざること識者を俟たずして明らかなり。(略)けだし一国の文明はひとり政府の力をもって進むべきものにあらざるなり。

そもそも事をなすに、これを命ずるはこれを諭すに若かず、これを諭すはわれよりその実の例を示すに若かず。

学問の本趣意は読書のみにあらずして、精神の働きにあり。

人の仕事を見て心に不満足なりと思はば、みずからその事を執りてこれを試むべし。

 特に最後のフレーズは仕事をしている私もはっとさせられました。当事者意識、大事です。

 

梨木香歩/村田エフェンディ滞土録(角川文庫)

村田エフェンディ滞土録 (角川文庫)

村田エフェンディ滞土録 (角川文庫)

さて、ここからは本当の息抜きです。笑

まず文系の方にはこちら。梨木香歩さんの名作「村田エフェンディ滞土録」です。

日本がようやく治外法権の撤廃を認められた頃、トルコで考古学を学ぶ機会を得た村田の滞土録。

英国夫人の家に鸚鵡と、ギリシャ人、ドイツ人、トルコ人、そして村田が下宿し、相異なる価値観が共有されていきます。

学問を通じて全くバックグラウンドの違う人たちが繋がっていき、そこで繰り広げられる知的で刺激的な会話の数々に向学心が喚起されます。

著者のエッセイを彷彿とさせる異文化共存の在り方をじっくり考えさせられる挿話の数々とよく整えられた穏やかな文体が心地よく、時折起こる狐や火の竜などの神々にまつわる神秘的なできごとに胸は高鳴るばかり。

そして、トルコでの和やかな日々、からの思いも寄らぬ切ない幕切れに、鸚鵡との再会に、抑えようもなくこみあげてくる涙なのでした。

 

野尻抱介/南極点のピアピア動画(ハヤカワ文庫JA

南極点のピアピア動画 (ハヤカワ文庫JA)

南極点のピアピア動画 (ハヤカワ文庫JA)

理系の方にはこちら。

ピアピア動画(=ニコニコ動画)と小隅レイ(=初音ミク)への愛が詰まった夢とロマンのSF連作短篇集をおすすめします。

小隅レイが南極へいき、宇宙へいき、クジラと会話して、宇宙人との遭遇を果たし、そして増殖する・・・。第1章から3章までもすばらしいのですが、最終章で大円団へと向かう高揚感あふるる展開にwktkが止まりません。(この本を読むとこういう言葉遣いがうつります)

サブカルならぬサブサイエンスとでもいえばよいのか、ニコニコな人たちが面白いというだけで費やすなみなみならぬエネルギーに圧倒されます。

科学が災厄をもたらすようなSFもそれはそれで様々な気付きがあり良いのですが、学問を学ぶことのシンプルな喜びや、科学の夢とロマンがぎゅっと詰まったこういうSFがあると、生きることにポジティブになれる気がします。

ドワンゴ会長の皮肉たっぷりの解説まで含め大変楽しませて頂きました。

 

少年よ大志を抱け

実際に大学に入学すると、想い描いていたほどには、キラキラな大学生活が訪れるわけではないのですが。

とにかく入学前は存分に夢を見たらいいと思うのです。

でもどんなに夢を抱いても、勉強しないと夢見る大学生にはなれないので、息抜きが終わったら、ちゃんと勉強に戻りましょう。

と、偉そうなことを言えるほど、集中力あるタイプではないのですが。

【妄想読書】もしも片思い気分を盛り上げるなら

妄想といえば、恋愛!

そしてもっともわくわくするのは恋の始まりの時期ではないでしょうか!?今回はそんな時期にぴったりの本を推薦します。

選ぶ本は毎度、私の趣味に基づいてますのであしからず。

 

妄想シチュエーション

○社会人になってから少し恋愛にブランクがあったけど、最近俄かに片想い相手が。

○連絡を少し取り合うようになっていい感じ!わくわく

○久しぶりの恋愛なのでうまく距離を詰められなくて困ってる

 

こんなときはどんな本?

○今の恋する気持ちを盛り上げられるようなトキメキを感じる本

○悲恋NG!お約束でも両思いの幸せにたどりつける本

○女子力アップしそうなかわいい装丁の本

 

オススメしたいこの3冊 

千早茜/からまる(角川文庫)

からまる

からまる (角川文庫)

文章の端々から奥ゆかしく漂う色香に心地よく酔う。

もがき迷いながら“いま”を生きる7人の男女の登場する連作短篇集です。

その主軸を担うのが、月に2、3度の体の関係だけでつながっている、名前も知らない二人の男女。なんだか不純な関係に思えますが、そのからまりがほどけていく瞬間の重すぎない、でもベタな展開にぐっとくるのです。

読後感は秋晴れの青空のように爽やかです!

各話、無脊椎動物の逸話など、小道具の使い方が巧く、雅やかで洗練されています。

「からまる」が好みでしたら、同著者で同じひらがな4文字のタイトル「あとかた」もぜひ読んでみてください。

 

②蒼井ブルー/僕の隣で勝手に幸せになってください(中経出版

僕の隣で勝手に幸せになってください

僕の隣で勝手に幸せになってください

この本はTwitterフォロワー数11万人超、フォトグラファー蒼井ブルーさんのつぶやきを彼の撮影した美少女たちと共に紹介するポエム集です。

同じような恋愛小説ばかりを紹介するのも面白くないなと思い、こちらを加えました。

直接的に誘うのが恥ずかしくて「こちらには君の好きな具を米粒にねじ込む用意がある」と言ってみたものの「ピクニック行く?」と真正面から返されて「はい///」みたいになりたい。

「顔に何か付いてない?」と訊いたら「かわいい目とかわいい鼻と奪いたい唇が付いてる」と言われて始まったりしたい。

友人の彼女がワガママひとつ言わない謙虚な人らしいのだけど、

「いいお嫁さんになるからどうぶつの森を買ってください><」

と珍しくおねだりしてきて、

なんだそんなものでいいのかーと買ってあげたらしい。

いやそんなものって!結婚もセットでおねだりしてますよね!

してますよね!

「何してる?」って訊けなくて「やっほー」みたいに送ったけどホントは全然やっほーじゃない。何してる?

他にもオススメフレーズたくさん!ルミネの広告の男性版みたいな、穂村弘的エッセイの呟き版みたいな、ポエマーな著者の日常と妄想と思索がぎゅっと詰まった素敵本です。

こんな彼氏が欲しいとは思わないけど、寝る前に好きなフレーズを探してきゅんってしたい。自分の恋愛フェーズに合わせてきゅってなるポイントも違うのではないかと思います。

ポエムなんて!と馬鹿にせずに、とりあえず読んでみることをおすすめします。

 

ジェイン・オースティン/ノーサンガー・アビー(ちくま文庫

ノーサンガー・アビー (ちくま文庫)

ノーサンガー・アビー (ちくま文庫) 

オースティンはこれだからいいんだっ!と思えるラブコメディ。

えっオースティンって誰!?って思ったそこのあなた。「恋する乙女」がオースティンを知らないなんて、邪道ですよ。

有名なのはたびたび映画やドラマにもなっている「高慢と偏見〔新装版〕 (河出文庫)」です。こちらもダーシー卿のツンデレぶりに身悶えするようなトキメキを感じられますが、もっと爽やかな恋愛をご所望の方には、敢えて「ノーサンガー・アビー」を推薦します。

主人公は17歳の平凡な女の子、キャサリン。けれど、心優しく純粋でとてもよい子なんです。

旅先での恋、ゴシック小説を読んで憧れていたとおりの素敵なお屋敷に招かれて、夢のような時を過ごすキャサリンに立ちはだかるソープ兄のうざさがまた巧い。

私もこのノーサンガー・アビーの世界のヒロインになりたい!とキャサリンにも負けず妄想してしまいそうになります。

 

本に勇気をもらっていざ走り出そう

「ノーサンガー・アビー」のように本に過度に影響されすぎるのは危険ですが、この人のこと好きになっていいんだっがんばろうっ!と勇気をもらうのに、こういう幸せな読書体験はとても役に立ちます。

非現実世界を堪能したら、リア充目指していざ走り出していただけましたら幸いです。

【妄想読書】もしも寒い休日の朝に布団の中で読むなら

いつもオススメの本を聞かれるのですが、どんな気分、どんな場所に合う本かでだいぶ薦める本が変わりますし、もういっそ自分でシチュエーションを想像してぴったりの本を3冊だけ厳選して紹介するコーナーを始めることにしました。

 

選ぶ本は完全に私の趣味です!

 

妄想シチュエーション

○寒い冬の朝、暖房つけてなくて寒くて布団から出られない

○今日は土曜日、まったり昼過ぎまで読書するのだ

○布団から出した顔と本を持つ手が冷たい。

 

こんな時はどんな本?

○お布団にいながら非現実に想いを馳せることのできる本

○現実の寒さと本の中の寒さに繋がりが感じられるような本

○のめり込むと1日が終わってしまうので良きタイミングでいったん読むのをやめられる本

 

オススメしたいこの3冊

 ①ソルジェニーツィン/イワン・デニーソヴィチの一日(新潮文庫

イワン・デニーソヴィチの一日 (新潮文庫) 

イワン・デニーソヴィチの一日 (新潮文庫)

 無実の罪で10年の刑期を言い渡され、わずかな食事で極寒の地での重労働を強いられるシューホフのある1日を描いた作品。

と、書くとなんだか気持ちが塞ぎそうな印象を持つかもしれませんが、描いているのは彼曰く幸福な1日の出来事!雨の底抜けに明るいのです。

この劣悪な環境においても、生き続けることに迷いのないシューホフのささやかな日常に、命のきらめきすら感じてしまうのです。

「古くなった月はどこへいっちまうんだね?」と労働後に囚人仲間と会話するシーンがなんともロマンチックで印象に残っています。

彼らの寝具や衣類の寒さを思うと、同じ冬をこんなに暖かい布団の中でぬくぬくと過ごせる自分の幸福が身にしみて感じられます。

 

  ②多和田葉子/雪の練習生(新潮文庫

雪の練習生

雪の練習生

ホッキョクグマの三代記。

何しろホッキョクグマの気持ちに寄り添うなら冬です。しかもこんな夢のような物語にはお布団の中が似つかわしい。

舞台は冷戦時代のドイツが中心。

一代目は自伝を執筆し、二代目はサーカスでスターとなり、三代目は動物園のアイドル、あのクヌートとなります。

人間に飼われる白熊としての振る舞いと人間のような言動と、夢とうつつと。まるで短調の旋律でワルツを踊っているような淋しさと優雅さと可笑しさが共存した文学でしか表現し得ない世界に魅了されます。

お布団の中でちょっとうとうとしながら、めくるめく彼女らの世界に浸ってください。

三代目のクヌートが心細い夜に思考するシーンの言葉が素敵で印象に残っています。

《時間は食べ物と違って、がつがつ食えばなくなるものではない。時間を前にするとクヌートは自分の無力さを思い知らされる。》 

 

堀江敏幸/雪沼とその周辺(新潮文庫

雪沼とその周辺 (新潮文庫)

雪沼とその周辺 (新潮文庫)

第29回川端康成文学賞、第40回谷崎潤一郎賞、第8回木山捷平文学賞と数々の純文学の賞を総なめにした雪深い町で静かに暮らす人びとを描いた連作短篇集。

しんしんと冷えゆく雪沼を包み込むような優しく透き通った文章が心地よく、何気ない日常をこれほど印象的な作品に仕上げるのはまさに職人のなせる技です。

純文学は苦手という方にも是非読んでみていただきたいですし、堀江さんの作品が実は気になっていたという方にもオススメです。

私のお気に入りは、フランス料理を人に教え、一人息を引き取った老女の心の秘密を生徒たちが推測する「イラクサの庭」、雪沼でレコード屋を開業する男性がスピーカーの音質をよくするためにレンガを積んで調整する「レンガを積む」、一番筋の悪かった見習いが偶然店主になり中華料理店を営む「ピラニア」。

正直、あらすじを説明しても全然良さが伝わらないことがもどかしいのですが、さりげない一瞬一瞬にその人の積み重ねてきた人生がじんわりとしみ出しているんです。

 

休みの日にのんびり布団の中で読書できる幸せ

想像しただけでうっとりしてしまいます。

時節に合った本を選ぼうといつも思っているので、この3冊を読んだのは寒い季節だったと記憶していますが、「寒い」という共通項がありながら、ここではないどこかへ飛躍できる読書は本当に素晴らしいものです。

この冬もそんなぬくぬく読書にふさわしい1冊を発掘していきたいと思います。