あやしうこそものぐるほしけれ。

心に浮かびゆくよしなしごと

12月読んだ本まとめ(読書メーター)

2015年最終月もペースを守って読んでいくことができました。 また、その年に刊行した本を一定数読んでいくことを大切にしているのですが、『「読まなくてもいい本」の読書案内 ――知の最前線を5日間で探検する』『魔法の世紀』『陽気なギャングは三つ数えろ (ノン・ノベル)』はそれぞれ2015年刊行で何とか滑り込んだ形です。

また2015年読んだ本ベストにも書きたいと思いますが、昨年はKindleという新しい読書のお供ができたことで、ビジネス書や青空文庫(下記の『少女地獄』も実は青空文庫で読みました)といったこれまで読む対象としては考えていなかった本と出逢う機会に恵まれていたなと思います。

 

2015年12月の読書メーター
読んだ本の数:6冊
読んだページ数:1567ページ
ナイス数:407ナイス

少女地獄 (角川文庫)少女地獄 (角川文庫)感想
魅惑的な少女たちの心に潜む“毒”を描いた3篇。1936年の刊行とは思えないほど少女たちの狂気は鮮やかで激しく決して色褪せない。嘘つきの看護師姫草ユリ子、復讐に燃える女車掌友成トミ子、「火星の女」女学生甘川歌枝の破滅に向かう軌跡が手紙形式の独特な文体で語られるその妙に魅了されました。皆川博子氏、恩田陸氏らの少女たちを描いたミステリーにもその世界観が継承されているように感じます。《彼女は殺人、万引、窃盗のいずれにも興味を持たなかった。ただ虚構を吐く事にばかり無限の……生命がけの興味を感ずる天才娘であった。》
読了日:12月2日 著者:夢野久作


「読まなくてもいい本」の読書案内:知の最前線を5日間で探検する (単行本)「読まなくてもいい本」の読書案内:知の最前線を5日間で探検する (単行本)感想
「読まなくてもいい本」とは進化論を土台にして遺伝学から経済学まで学際的に生じた“知のビッグバン”以前の理論に関する書籍のことです。どうせ読むなら今を理解するのに役立つ本を優先的に読めということですね。ブックガイドの気持ちで読んでみたら、知のビッグバンとは何だったのかについて熱く語られていて、その説明がなんとまぁわかりやすく面白く嬉しい誤算でした。複雑系から心理学からゲーム理論まで全部繋がっているんだとわかった時のわくわく感がもうたまらなくて。結果として読みたい本が増えるばかりなのは、想定の範囲内です。
読了日:12月13日 著者:橘玲


The Indifference Engine (ハヤカワ文庫JA)The Indifference Engine (ハヤカワ文庫JA)感想
まだその時が来ていない気がして未読のままでいた本書と遂に向き合い、込み上げる追悼の想い。「虐殺器官」と「ハーモニー」を生み出した奇跡の作家、伊藤計劃の思想の断片が刃のように鋭いままに散りばめられた作品集でした。完成度の高さでいうと表題作、「From the Nothing, With Love.」が白眉です。脳を加工して感情を操作したり、意識を別の肉体に移植したりと脳科学の未来の核心に切り込みながら、ハードボイルドな展開と叙情的な人物描写で読者を魅了する著者の小説世界は短篇においても決して揺らぎません。
読了日:12月23日 著者:伊藤計劃


魔法の世紀魔法の世紀感想
著者によれば「映像の世紀」の次にやってくるのは「魔法の世紀」だといいます。メディアアートというものを恥ずかしながら知らなかったのですが、人間中心主義を超越し、異なる次元の問題を等価に処理することで、あらゆる場所に同時に存在しているように振る舞える世界を私も見てみたいです。魔法という割にメディアの歴史と未来を時に専門用語も交えて多方面から書き尽くしていて、決して易しくないその骨太な内容が、口先だけのビジネス書とは一線を画していて逆に好印象。飲みながら延々と話を聞いていたくなるような夢とロマンがありました。
読了日:12月27日 著者:落合陽一


陽気なギャングは三つ数えろ (ノン・ノベル)陽気なギャングは三つ数えろ (ノン・ノベル)感想
そうそうこれこれ!という感じのシリーズ第三弾。ギャング達もおじさんおばさんになってきてちょっと落ち着いてきたかな!?という感じですが、トラブルの方がギャングたちを放っておいてくれないようで。第二弾はばらばらだった小品が後半でまとまり怒濤の盛り上がりを見せましたが、今回は最初から最後までハイテンションが続きそのままフィニッシュ!という印象。著者の作品は徹底的な伏線回収と雑学垂れ流し的な会話がいつも良いんですが、このシリーズは加えて「キャラ」がいい。響野好きだなぁ。どんな嫌みもポジティブに返すその才能に乾杯。
読了日:12月29日 著者:伊坂幸太郎


日々の100 (集英社文庫)日々の100 (集英社文庫)感想
私は逆立ちしてもこんなオシャレな生活はできない。毎週一輪の花を買ってきてガラスの花瓶に飾り、海外で買い付けてきた家具に囲まれ、お気に入りのオーデコロンをつけて眠り、友人によるオーダーメイドの靴を履き、満員電車では洋書を読み、仕事はお気に入りの鉛筆をナイフで削りながら進めるなんて…むしろ同じ地球に住む人間に思えない。けれど、1ページに凝縮された丁寧な文章に魅せられ、自分の怠惰で適当すぎる日々の暮らしを見返さずにはいられない、1年を締めくくるに相応しい1冊でした。100といいつつ103のコラムを収録…なぜ?
読了日:12月30日 著者:松浦弥太郎

もうすっかり年が明けてからのまとめとなってしまいましたが、2016年も今読むべき本を日々夢想しながらもりもり読んでいきたいと思います。